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このページでは音楽制作エンジニア、葛巻善郎日々の出来事をつづります。

音響のアルチザン

僕がマスタリングしているエアー・メイル・レコーディングスさん6月の新譜は好評の British Legend Collection Vol.68、「音の質感にこだわる音響のアルチザン」と題した Rupert Hine の3タイトルです。

エアー・メイル・レコーディングス

http://www.airmailrecordings.com/

ルパート・ハインといえばハワード・ジョーンズ、フィックス、ティナ・ターナーなどのプロデューサーとしてお馴染み、僕の大好きなアーチストだとクリス・デ・バーなども手がけています。 80's 独特のサウンドと彼の音世界は完全にマッチ、一世を風靡した、僕も大好きなプロデューサーの一人です。

そして今回の3枚はそんな彼のソロ・アルバム、まずは扉写真、1981年にリリースされた3rd.「Immunity」、フィル・コリンズやマリアンヌ・フェイスフルをゲストに迎え、綿密なまでに計算されたサウンド・スケープを展開しています。
続いて82年リリースの4th.「Waiting Not Drawning」(写真左下)、1曲を除き全ての楽器を自ら演奏、当時注目されていたフェアライト等のサンプラーは一切使用せず、メロトロンで壮大な音楽空間を作り出しています。 一聴するとフェアライトに聴こえてしまうのですが、あえて手間暇かかるメロトロンを使っているところが男らしいですね。
そして83年にヨーロッパの一部、85年にワールド・ワイドでリリースされた5th.「The Wildest Wish to Fly」(写真右下)、この頃はプロデューサーとしての名声がピークに達した時期で、ソロ・アルバムは若干趣味っぽい作りになっていますが、なんといってもロバート・パーマーの全面参加が注目です。

レコーディングの教科書

ALL-TECH 9063B EQ

バラとひまわり

6月

ヒプノシスと共に紡ぎ出す、英国プログレの多様性

朝鮮舞踊の緋緞道

悔悛と歓喜

ショパンに恋して

5月

You've Got a Friend

レコーディ ング本

With You

Now Here I Am

Conforto

4月

新しいプラグイン2つ

洋楽のリマスタリングにおいて一番気を付けていることは、その時代の音に仕上げる、ということです。 それはどの段階の音かというと、レコーディングを終え、ミックスの最終段階、スタジオのコントロール・ルームにプロデューサーとアーチストが集まり、「よし、この音でいこう」とみんなで頷き合ったであろう音です。 現在のレコーディング・プロセスではこの後にマスタリングという作業があって最終的な音が出来上がるのですが、80年代まではミックスを終えた音が最終的な音だったはずです。
80年代にもマスタリングという概念はありましたが、それはあくまでデジタル編集のようなもので、単にCDプレスのマスターを作る、という意味でのマスタリング (マスタリングの語源はここにありますが) でした。 そして、残念なことに機材の問題でこの時代の作品はマスタリングによって音が細くなってしまっているのです。 80's 独特のちょっと細いサウンド、僕はリアル・タイムでここを通っているのでひじょうに思い入れがあるのですが、この「ちょっと恥ずかしい音」は楽器やレコーダーがデジタルへと移っていったためになってしまった音であり、マスタリングによって細くなった分は 80's の音とはまた違うものだと思っています。 そんなわけで、今回のマスタリングで重点を置いたのは「本来の恥ずかしい音」へと戻すことです。 当時のデジタル・マスタリングで細くなった (と思われる) 分のみを元に戻し、サウンド自体はあの時僕が聴いていたイメージを損なわないようにしたつもりです。
大げさなドラム・サウンドなど、久しぶりに恥ずかしくなってしまいましたが (笑)、僕が初めて洋楽に接したあの時代の音、僕にとっては 70's ロックへの入り口になった懐かしい 80's のあの音に、うまく仕上げられたと思っています。 ぜひ聴いてください!