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このページでは音楽制作エンジニア、葛巻善郎日々の出来事をつづります。

Conforto

今月からしばらく、僕がレコーディングやミックスをしたものが続々と発売になるので順番に紹介していきます。 まずは FONTE「Conforto」、ランブリング・レコーズさんから発売です。

FONTE

3人の名人による「音の泉」

http://www.gennoshin.com/fonte.html

FONTE とはポルトガル語で泉という意味です。 メンバーは3人、中川昌三 (フルート)、小畑和彦 (ギター)、そして安井源之新 (パーカッション)、源之新さんが所属している RHYTHMATRIX のアルバムのマスタリングを去年僕がやったことから、今回のプロジェクトに関わることになり、ミックスとマスタリングをしています (敬称略)。
録音自体は5年ほど前から源之新さんの自宅スタジオ等で進められており、レコーダ Roland VS-1680 から Studio CMpunch の Pro Tools にデータを移すことから始まりました。 録音は 16bit、44.1kHz で行われており、データとして取り込めないのでデジタルで Pro Tools に流し込み、ミックスは 24bit、96kHz にコンバートして行っています。 ミックス本にも書いていますが、なぜアップ・サンプリングしてミックスするかというと、音自体が良くなるわけではなくても、プラグインのかかり方がハイ・サンプリングの方が全然良いので、結果的に得られるサウンドが良くなるからです。

4月

新しいプラグイン2つ

スペース・ロック・ファンタジー

キャラメル・マキアート

PSP sQuad

3月

The EDDIE KRAMER Modeling

アメリカ人の英国詣

TOKYO SESSIONS 1989

BBE Sound Sonic Sweet

2月

スティームハマー

258tc

NHK スペシャル・20年の歴史

パトリック・モラーツ

1月

トリオ編成ですが、レコーディングではギターのバッキングがダブルで録られ、さらにソロも別チャンだったりするのでギターで3トラック、フルートも曲によっては何本か重なっていています。 パーカッションはチンバもしくはパンデイロがメインで、その他にさらにいくつかの打楽器が重ねられているので、トラック数は少なくて7つ、多いと14くらいだったと思います。

データをもらってからマスタリングの締め切りまでおよそ40日、ミックスは楽しかったですがたいへんな部分もありました。 まず、基本的にはブラジリアン音楽なのですが、3人のミュージシャンのバックグラウンドが微妙に異なっていること (まぁこれは当たり前ですが)、それから録音は一人ずつバラバラに録っていて、しかも何本か重ねているので、それを3人が同時に演奏しているように聴こえるよう仕上げること、などです。 早い段階から最終的な音のイメージはできていましたが、試行錯誤を重ねながら、厚くもなく薄くもなく、限りなくナチュラルで気持ち良い、アルバム・タイトル通りの音になるようにミックスしていきました。

下の写真が4曲目「Triste」の編集ウィンドウです (クリックすると拡大します)。 この曲ではゲスト・ヴォーカルが加わっているので、ギターは2本、フルートもオーヴァーダブはなく1本です。 しかし、今回はダブル・トラッキングという手法を使っていて、2本のギターをステレオにまとめて別トラックにコピー、フルートとヴォーカルも同じものをコピーして別トラックを作っています。 楽器によってダブル・トラッキングのエフェクト処理は異なっていて、ヴォーカルはダブルにすることにより厚いサウンドとなるよう、ギターとフルートは自然なリヴァーブ感を得られるような作りになっています。
ダブル・トラッキングの利点は簡単に音が厚くなること、それからうまくコンプの設定をすればヴォリュームをほとんど一定のままにできることです。 下の写真を見ても、ほとんどヴォリュームを書いてないのがわかると思います。
そして今回一番工夫したフルートは、片方に深いリヴァーブをインサートしてステレオにし、さらに両方のトラックにみんなと同じリヴァーブをかけて、なんとも素敵な響きを演出、ソロの時のみリヴァーブを含んだトラックのヴォリュームをちょっと上げることによってソロがさらに気持ち良く聴こえるようにしてみました。
ギターのダブル・トラッキングの方と、さらにパーカッションの一部にもそれぞれ個別のリヴァーブとみんなと共通のリヴァーブをかけ、それによって、3人が一緒に演奏している感を演出しているのです。

3人のミュージシャンそれぞれに自分の演奏や音へのこだわりがあり、もちろん僕にも自分のミックスやマスタリングへのこだわりがあります。 僕のこだわりとは、決して修正をしないということ、ピッチを修正したり、演奏されたリズムをずらしたり、ということは一切していません。 そして、たくさんの自分なりの工夫を重ね、最終的に自分の色を消す、ということです。 このCDを聴くと、3人の顔と演奏している姿が浮かんでくるはずです。 CDと聴き手との間に僕の存在を感じられないようにするのが理想なのです。 今回のミックスでは、何度も意見を交換し合い、結果的に素晴らしいチーム・ワークができたと思います。
なぜか僕が撮った写真が見当たらなかったので、源之新さんのブログから下の写真を拝借しました。

若い頃、PEACE LIGHTS というタバコのCMが大好きでした。 そのCMには宮本文昭さんや天野清継さん、そして中川さんが出ていて、クラシックをアレンジした素晴らしい演奏を披露していました。 あぁ、こんな音楽がやれたらいいな、と憧れていた中川さんとこうして一緒に作品が作れて、とても光栄です。

Conforto、ポルトガル語で心地よい、という意味です。
ぜひ聴いてください!