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このページでは音楽制作エンジニア、葛巻善郎日々の出来事をつづります。

新しいプラグイン2つ

シンガー竹内晴奈さんのアルバム制作、歌録りを終え、現在ミックスを進めています。 レコーディング・レポートで書いたように好きなジャンルの音楽ではあるものの、お仕事であまり接したことがない種類なので、今まで使ったことのなりプラグインを使ってみたり、いろいろと試行錯誤中です。 レコーディング方法や機材などに僕なりのこだわりはもちろんありますが、作品そのものは自分のものではなくアーチストさんのものなので、希望に添うように時には新しいノウハウを得たり、自分の枠を広げることも必要です。

今回のミックスでは僕にとって大革命ともいえるいくつかの手法を試し、なんとか自分のものにできたと思います。 それらの紹介はアルバムができた時に改めてするとして、今日は最近使っている新しいプラグインを2つ紹介します。 しかも2つともフリーウェア、つまり無償で手に入れることができます。

まずは Flux の BitterSweet、これは Syrah という新しいダイナミクス・プロセッサーを購入した時に同時にゲットしました。Syrah はちょっと難しそうなので今回はまだ使わず、この BitterSweet をちょこちょこっと試しています (画像をクリックすると拡大します)。 操作はとても簡単、中央のツマミを Bitter よりに回すと音が熱い感じになり、Sweet 方向に回すと甘い感じに変化するのです。 この効き具合はフリーウェアだけあってそんなにキツくはかからないのですが、これの面白いのは左下の Mode セレクトで、Main 位置では素材全体にかかり、Center では MS に分離させたセンターのみに、Stereo ではサイドのみにかかるのです。 写真右下にあるようにアウトプットを ±12 の範囲で調整できるので、単純に MS 分離させ音量を MS どちらかだけ上下させる、という用途でも使えます。 使い道としては、例えばストリングスのセンター音像を甘くしてステレオ感を出したり、センターに音のないタム・チャンネルや、どちらかというとセンターの音を必要としないドラムのオーヴァーヘッド・チャンネルにインサートしてセンターもしくはサイドの音像を操作する、などいろいろと使えそうです。

スペース・ロック・ファンタジー

キャラメル・マキアート

PSP sQuad

3月

The EDDIE KRAMER Modeling

アメリカ人の英国詣

TOKYO SESSIONS 1989

BBE Sound Sonic Sweet

2月

スティームハマー

258tc

NHK スペシャル・20年の歴史

パトリック・モラーツ

1月

謹賀新年

プレイバック 2009 - 10月〜12月

次は僕が MS 処理を常套手段として使うようになったきっかけともいえるメーカー Brainworx のフリーウェア、bx_cleansweep です (写真下)。 このメーカーのプラグインは全て所有していますが、よく使うのは MS デコーダ & エンコーダである bx_control とダイナミック EQ という珍しい種類の EQ bx_dynEQ 、これ以外の他のプラグインは基本的にマスタリング・クオリティの MS 仕様 EQ で、操作するツマミが多く若干難しいです。

この bx_cleansweep、拡大した画像を見れば一目瞭然、ハイパス・フィルターとローパス・フィルターのみの機能です。 ジョイスティックもしくはその上にあるツマミ、もしくは右下部に直接数字を入力する、この3つのやり方のうちどれらかで6db のフィルターを操作します。
EQ というのはひじょうに奥が深く、本来はイコライザーという名の通り真っ平らな音に戻すためのものだと僕は思っていますが、ミックス時においては EQ で積極的に音作りをする人も多いでしょう。 EQ で難しいのは音を作ってソロで聴くと良い感じでも、全体と一緒に混ぜると必ずしも良い感じになっているとは限らない、ということと、EQ を操作した音だけでなく、結局他の音にまで影響を及ぼし全体のバランスが変わってしまう、ということだと思います。 ゆえに僕はなるべく EQ を使わないミックスやマスタリングを心がけていますが、やはりアーチストさんからのリクエストで一番多いのが「もう少し高域を突いて」など EQ で解決するのだろうな、という種類のものです。 そしてEQ とコンプはプラグインの中でも一番種類が豊富なのでほとんど使わないものも含めてかなりの数のプラグインを所有しています。 操作するツマミが多いほど幅広い音作りができるわけですが、反面慣れるのに時間がかかり、完全に自分の意図を表現できる EQ というのはなかなかないなぁ、というのが実感です。
ハイパスとローパス、これらは Low Cut と High Cut と解釈した方がわかりやすいかもしれません。 cleansweep という名の通り、余計な高音や低音を思いきってカットするのです。 ここで奥深いのは、例えばベースの低音を強調しようと思った時に、逆にハイパス・フィルターで超低域をカットしてしまう方が思い通りの低音になったりするのです。 この cleansweep をうまく使えば各トラックの余分な音を効率的にカットでき、それはつまり空間ができるのでマスタリングで音圧を上げやすくなるわけです。

今日紹介した2つのプラグイン、どちらも積極的に大きく音を変えるものではありませんが、こういった地味なプラグインを各トラックに配置し、少しずつ音を整えていくことが全体のブラッシュ・アップに確実に繋がるのです。