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このページでは音楽制作エンジニア、葛巻善郎日々の出来事をつづります。

悔悛と歓喜

3冊目の本の制作に追われてしばらくこのコーナーの更新ができませんでしたが、今月もいくつかレコーディングをしています。 その中の2つをこれからレポートしていきますが、まず今回はGW期間中に行った女性合唱団 Brilliant Harmony のレコーディングのレポートです。

Brilliant Harmony

http://brilliantharmony.com/

Brilliant Harmony (以下ブリリ) は昨年が結成20周年、僕は何度か定期演奏会のレコーディングをしていますが、元はといえば僕の学生時代のバンド・メイトがブリリの団員だった時期があったり、常任指揮者である松下耕さんと一緒に制作をしていたこともあったりと、密接な関係にあります(と勝手に思ってます (^_^;)。
CD制作も何度かお手伝いしていますが、今回は合唱団によくある定期演奏会の演奏をまとめたものではなく、CDのためのレコーディングを行おうということになり、光栄にも声がかかりました。 そして、曾我泰久さんのレコーディング同様、僕のレコーディング本と時期が重なったこともあり、コラボレートしています。

ショパンに恋して

5月

You've Got a Friend

レコーディ ング本

With You

Now Here I Am

Conforto

4月

新しいプラグイン2つ

スペース・ロック・ファンタジー

キャラメル・マキアート

PSP sQuad

3月

The EDDIE KRAMER Modeling

アメリカ人の英国詣

TOKYO SESSIONS 1989

このCDのためのレコーディングは計3回、初回は昨年末にスタジオで行っており、この時の様子は来月出版される僕のレコーディング本に詳しく書いてあります。 そして第2回目になる今回はホールで録音しよう、ということになり、場所も押さえていたのですが、なんとそのホールの防音がいまひとつということが直前になって判明、慌てて別のホールを探すと今度は同じ日に和太鼓のコンサートがちょっと離れたところで行われることが判明しやむを得ずそこも回避、二転三転し結局鴻巣にある クレアこうのす という会館の大ホールで行いました。 賑やかな吹奏楽などだったら問題なかったのかもしれませんが、今回録る曲が繊細な宗教曲ということで場所選びに神経使いましたが、結果的にはこのホールは良いところでした。
大ホールはキャパ 1,300 、ステージから客席内を見た感じが扉写真、ちょっとわかりづらいですが三点吊りマイクも写っています。
ホールでの常套手段、この吊りマイクをメインとし、ステージにも補助マイクとして6本を立てました。 写真左下がその全景、真ん中の黒い椅子が指揮者である松下さんの場所、そのやや後方にあまり広げない感じに真空管マイク RODE K2 をペアで配置、そして合唱は基本4声なのでそれぞれのパートの前に MEARI 319-A7 と audio-technica AT4040 を立てています (写真は全てクリックすると拡大表示されます)。 この4本は外側と内側でペアを組んでいます。

ホールでのレコーディングは演奏する側にとっても録る側にとってもモチベーションが上がるので好きなのですが、レコーディング・スタジオと比べるとセッティングはたいへんです。 CUE システムはクラシック系の場合はいらないことが多いので良いとして、しっかりとしたモニター・システムを持ち込まないといけなかったり、録音する場所への配線がたいへんだったりするのです。 今回は約35メートル離れた楽屋にプリ・アンプとレコーダを設置、ステージからマルチ・ケーブルを引きました。 各マイクからマルチ・ボックスへのケーブルとボックスからプリ・アンプへのケーブルは持参した愛用のレクスト製のケーブルを使用、間に CANARE のマルチ・ケーブルが入るので意味はないかと思いきや、これが全然違うのです。 レクストのケーブルのまま長く引き回している印象、つまりはしっかりとした音で録れるのです。
写真左下は楽屋に設置したレコーダ等の機材、電源ケーブルをレクストのレゾナンス・ピットで挟むためのスペースを作ったり、電源ケーブルが直接触れ合うことのないようにと、こういったちょっとした工夫が後で大きな差となってくるのです。
写真右下は松下さんの後方に立てた真空管マイク K2 の電源、ここにもレゾナンス・ピットを両脇にセット、指向性は無指向から一目盛り単一寄りとしています。

今回録ったのは昨年のブリリ結成20周年を記念して松下さんが作曲した「悔悛と歓喜〜四旬節から復活祭への4つのモテット」、全4曲からなる組曲です。 合唱だけでなく、全ての音楽の原典は宗教音楽であり、好きとか嫌いなどという次元で語ってはいけない種類の音楽だと思います。
レコーディング自体はとてもスムーズに進み、OK テイクと若干の編集用テイクもすぐに決まりました。 素晴らしい理解度、などと僕が言うまでもないのですが、完全にこの曲を自分たちのものにしていたブリリの合唱は素晴らしかったです。 マイクを意識せず、その向こう側へ、天へ向かって捧げるような歌声でした。


レコーディング終了後は大宮のフレンチ・レストランで打ち上げ、素晴らしい一日でした(^_^;)


レコーディング3回目は6月に行われる定期演奏会の一部です。 これはこれでやり直しがきかないので緊張感ある演奏になりそうです。