★ welcome to this page daisy <kuzumaki.net

このページでは音楽制作エンジニア、葛巻善郎日々の出来事をつづります。

NHK スペシャル・20年の歴史

昨年夏にリリースされた「NHK スペシャル 20th. Anniversary」「Museum」に続いて、NHK スペシャル20年の歩みを音で綴った3枚組の決定盤がランブリング・レコーズよりリリースされました。
僕がマスタリングをしています。

昭和天皇の崩御・天安門事件・ベルリンの壁崩壊といった歴史的事件がわずか一年のうちに起きた1989年、NHK 特集の後を継ぐ形で NHK スペシャルがスタートしました。 時代は平成へと移り変わりそれから20年、その間 NHK スペシャルは優れたドキュメンタリー番組をいくつも生み出しています。 この3枚組CDは、過去20年にわたる NHK スペシャルの代表的なテーマ曲、挿入曲を初回放映の年代順に並べて収録しています。

久石譲・冨田勳・大島ミチル・菅野よう子・加古隆・S.E.N.S.・坂本龍一・細野晴臣・・東儀秀樹・アディエマスなど豪華アーチストによる個性豊かな楽曲を62曲収録、全収録時間約210分とCDの枠を目一杯使ってます (アーチスト敬称略)。

パトリック・モラーツ

1月

謹賀新年

プレイバック 2009 - 10月〜12月

プレイバック 2009 - 8月〜9月

プレイバック 2009 - 6月〜7月

プレイバック 2009 - 4月〜5月

プレイバック 2009 - 1月3月

グラハム・ボネット

悲劇のティーン・パンク

pass-port

THIS IS IT !

12月

Crazy Love

Riverdance

生きる力のハーモニー

コンピ盤のマスタリングはとてもやりがいがあるお仕事ですが、制作された年代が多岐にわたる場合、それらをまとめて1枚にした時にどのように仕上げるか、ひじょうに難しい部分でもあります。 この20年の間に音楽制作やレコーディングの機材、そして技術も進歩し、大きく移り変わっているからです。 さらに、各アーチストごとに制作スタイルも違います。 それぞれの曲をただ並べただけでは当然聴きやすくはならないわけですが、では音圧や音量を整えればそれで良いのか、と言えばそれだけで解決するわけでもなく、ちょっとした音質調整なども曲ごとに微妙に変え、曲ごとの個性を活かした上で、コンピ盤として聴いた時に自然に流れるよう工夫してマスタリングしています。 例えばダイナミクス、大きすぎる部分をほんの少し抑えたり、小さすぎる部分をほんの少し持ち上げたり、こういった作業をコンプでやったり、リミッターでやったり、ヴォリュームのオートメーションでやったりと、使い分けているのです。

どの曲も本当に素晴らしく、どこから聴いても聴き応え満点ですが、やはり個人的に印象に残るのは加古隆さんの「パリは燃えているか」ですね。 この曲は世界各地の映像アーカイブを集めた大型シリーズ「映像の世紀」のテーマ曲で、あまりに映像にマッチしているな、と何度観ても身震いがした記憶があります。 加古さんはこのテーマ曲のメロディを着想するまでに、なんと2ヶ月も要したそうですが、激動の20世紀そのものを象徴しているかのようなこの雄大なテーマ曲、そしてこのシリーズは広く知られるようになり、何度も再放送していますね。 。

それから既発の2枚の紹介の時も書いていますが、僕が学生の頃に憧れていた S.E.N.S. の曲が今回も2曲収録されています。 同じ曲を3回マスタリングしたわけですが、実はそれぞれ毎回微妙に設定が違い、しかしCDの流れで聴いた時にはま同じよう印象で聴こえるようにしています。
Disc3 最後の曲はアン・サリーと細野春臣による「Smile」、2008年以降のマネー資本主義の暴走とアメリカの金融政策の実態に迫ったシリーズ「マネー資本主義」のテーマ曲として選ばれたこの曲は、ご存じ喜劇王チャーリー・チャップリンの映画「モダン・タイムス」の挿入曲、そしてジャズのスタンダードとして知られている名曲です。 ひじょうにクールなアレンジで、この映画が資本主義の暴走を痛烈に批判しているものなので、まさに抜群の選曲と言えます。

NHK スペシャルの20周年とはまったく関係ありませんが、昨年僕も40歳となり、そういった節目のタイミングでこのマスタリングをしたことはなかなか感慨深いです。
3枚組でしかも HQCD 仕様なので高音質、黒を基調としたアート・ワークもとても素敵です。 ぜひ聴いてください!