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このページでは音楽制作エンジニア、葛巻善郎日々の出来事をつづります。

RS124

プラグインの紹介は久しぶりになります。
Abbey Road Plug-ins から久々のリリースになったのは、アビィ・ロード・スタジオで1960年代に愛用されていた真空管コンプレッサーのシミュレート、RS124 です。

Abbey Road Plug-ins といえばコンプ・リミッターである TG12413 がよく知られていますね (写真下)。 その他8kHz のみをプラスすることしかできない RS135 を含む Brilliance Pack も僕はよく使っています。
そしてこの RS124、発売から1年以上経つのになぜか日本の代理店であるメディア・インテグレーションではいまだにラインナップに入っておらず、直接メーカーから購入するしかありません。 僕は昨年末の55% OFF セールの時に買いました(^_^;)

KEATS

7月

Urban Sound Cruise

花想ひ

6月

Welina 〜祈りとともに〜

たたえつくせなき

Japan Fire 5

5月

Voyage

金沢出張

4月

Make Us One

がんばろう、日本!

3月

Vintage Aural Exciter

扉写真にあるように、RS124 には3つのモデルがあります。 エディットできるパラメータは共通で、コンプのかかり具合が違うようです。 デフォルトでインサートされる 60050A と 61010B はバス・コンプとして使うのに適していて、アタック・タイムとリリース・タイムが3倍速い設計となっている 60070B はチャンネル・コンプに適している、とマニュアルには書かれています。 使ってみると確かに3つどれも微妙に違いますが、バス・コンプうんぬんというよりは好みで使い分ければ良いと思います。

TG12413 もひじょうに素晴らしいコンプ・リミッターでミックスでは必ず使うコンプの一つですが、この RS124 は TG12413 とはだいぶコンプ感が違います。 元の音とはまったく違うサウンドとなり、とにかくオケによく馴染みます。 馴染んでいるのに存在感はあるという、不思議な質感です。 雑誌のレビューなどで「ヴィンテージ・コンプの魅力はなんといってそのかかり具合、ナマってる質感だ」などと書かれているのが今まであまり理解できてなかったのですが、この RS124 を試した時、なるほど、と理解できました。 確かにこれは「ナマってる」としか言いようがありません。
その独特なかかり方はオンリー・ワンで、うまく使えばかなり素晴らしいサウンドが作れますが、使いこなすのはちょっと難しいです。 アタック・タイムは固定なので、サウンド作りとして要になるのは3つのモデル・セレクト (まぁこれはあまり大きな変化ではない)、そして Recovery ツマミです。 これは TG12413 にもありますがリリース・タイムのコントロールで、3つのモデルでそれぞれ違う設定のようです。 この Recovery の設定でナマり具合が変わり、それはつまりグルーヴ感が変わってくるので要注意なのです。 そしてもう一つの要が EMI コンプのユニークな機能である Hold、これは元音とコンプをかけた音があまりに違うため、トラックの最初の音、もしくは少し間隔が空いてしまいコンプのリリースが戻ってしまった後に訪れる最初の音の時にこのモードにして、違和感なくそこからのコンプ・サウンドに繋げるために使う機能のようです。 プラグインなのにヴィンテージ特有の癖がかなりあるのですが、これらをそれぞれ最適な設定にするとそれはそれは素晴らしいコンプ・サウンドが出来上がるわけです。

The Marima-Duo のミックスでは、マリンバのオン・マイクの低音部にこの RS124 を使いました。 しかし、やはりタイム感のコントロールが難しかったので一旦外したのです。 すると、アーチストさんから「聴きやすくなったけど、何か寂しい」との指摘が … 。 低音部のオン・マイクなので重要度としてはさほど高くないはず、全体のサウンドの5%くらいの存在感だと思いますが、 RS124 をかけるのとかけないのとではだいぶ違って聴こえたのです。 というわけで、再度 RS124 をこのトラックにかけ、よくチェックすると他のトラックにかけた TG12413 もかかり始めに違和感がある時があったため、ヴォリューム調整や Hold の調整をして違和感をなくしていきました。

そんなわけで、他のコンプより少し扱いずらいですが、この独特の質感はかなり素敵ですよ。 あまりに元音と変わってしまうので、ヴォーカルやベースやキック・スネアなど重要なトラックにかけるのではなく、さりげない役割のトラックにかけると面白いと思います。 もちろん重要なトラックにかけても良し、その場合は元音を別トラックにコピーし、両方の音を混ぜると良いと思います。

現在 Abbey Road Plug-ins は再び全プラグイン50% OFF のバーゲンをやっています(なぜか期間不明) ので、円高もありひじょうにお買い得です。 チェックしがてら、持ってなかった TG Mastering Pack (EQ) を、ついでに買ってしまいました(^_^;)