★ welcome to this page daisy <kuzumaki.net

このページでは音楽制作エンジニア、葛巻善郎日々の出来事をつづります。

りんごの子守唄

既に報道などでみなさんご存じだとは思いますが、Apple の共同創業者 スティーブ・ジョブズさんが56歳の生涯を閉じました。

もう長いことずっと闘病生活を続けていたそうですが、新 iPhone 発表の翌日というタイミングは「もうやりたいことは全てやった」という彼からのメッセージのような気がします。
もちろん世界中のクリエイターや同業者、各界の著名人、そしてライバルまでもが彼の早すぎる死を悼んでいます。 扉写真は現在の Apple のトップ・ページ画像、レコーディング業界でも例えばプラグイン・メーカーの Auddifex が下にあるメッセージをトップ・ページに表しています。

10月

Till the End

9月

15枚目

アコースティック・アルバム

8月

RS124

KEATS

7月

Urban Sound Cruise

花想ひ

6月

Welina 〜祈りとともに〜

たたえつくせなき

Japan Fire 5

5月

僕は機材や音が好きなのではなく音楽が好きなのです、と著作にも書いてますし、機材は所詮道具であって大事なのはそれをどう使うか、だと普段から公言しています。 すごいのは機械ではなく、それを作った人とそれを使いこなしている人だ、とも思っています。 そういう意味でもスティーブはとてつもなく大きな功績を残しましたし、彼が Macintosh を作ってくれなかったら、僕は今こうやって音楽制作の仕事を続けてはいなかったでしょう。

僕は1969年生まれ、この世代の特徴としては、アナログからデジタルへの移り変わりをリアルタイムで見てきたことだと思っています。 LP レコードは CD へと姿を変え、巨大な箱だったパソコンは文字通りパーソナルなものへと進化していきました。
そして Mac との運命的な出会いは専門学校を卒業した1992年でした。 その頃はまだレコーディングをパソコンでやるという時代ではなく、Mac は MIDI プログラミング、いわゆる打ち込みの分野で頭角を現していたのです。 卒業後も運良くアシスタントとして母校に残ることができた僕は、Vision というソフトを使って曲を作る、という授業を3年ほどアシストし、その間に一気に Mac を覚えました。 やはり最初は「コンピュータなんかと仲良くなれるかっ」などと思っていたのですが、いざ使ってみると Mac のあまりの操作性の良さにすっかり Mac Fan になってしまったのです。

レコーディングの機材はアナログ・レコーダーからデジタル・レコーダーへと進化し、a-dat の登場によって個人レベルでも良い音で録れるようになりました。 やがて Pro Tools が ver.5 になって飛躍的に進化し、ついに本格的なレコーディングがパソコンでできるようになったのです。 これが98年頃のことですから、DAW が主流となったのはつい最近のことなのですね。
その後も着々と進化していった DAW は、ここ2〜3年で Macintosh 同様ぼぼ完成の域に達したと思います。 CPU がインテルになってからの Mac はかなり安定していますし、処理も本当に速いです。
Virtual Console というプラグインを使えば、キックは NEVE、スネアは api、歌は SSL の卓を通した感じをシミュレート、なんてことも簡単にできるのです。 すごい時代になりました!

しかし、技術の進歩と裏腹に、残念ながら音楽は人々にとって数多くある趣味の一つに成り下がり、ここ日本だけではなく世界的にCDが売れない時代になってしまいました。 この現象はなぜなのかと考えた時に、制作側の僕らは大いに反省しなくてはいけません。
Pro Tools や数々のプラグインといった道具たちを、僕らは正しく使ってないのだと思います。 アートなのだから正解などはなく、自由な発想で自由に何をやっても良い、スティーブだってそう言ってます。 しかし、いくら自由であっても理想郷というものはあり、また間違った使い方というのも実はあるのだと思うのです。
ほとんどのハードウェアやソフトウェアが完成の域に達したこれからは、今後は我々人間がそれを使って何を作るか、そしてどうやってそれを使うか、が問われるような気がします。 若干話は音楽から離れますが、戦争で使う武器や、人々の生活を脅かす原発などに、これらのテクノロジーを使ってはいけないのです。

スティーブ、今まで本当にありがとう。 あなたのおかげで僕は今こうやって大好きな音楽の世界で仕事をすることができたし、Mac のおかげで昔からは信じられない効率で仕事を進めることもできてるんだよ。

天国にはあなたの友達はまだあまりいないかもしれないね。 でも、偉大なる先人エジソンにいつか会えるんじゃないかな。

僕はあなたのことを、決して忘れはしないよ。


下の写真は「りんごの子守唄 BOX」、アップルといっても Mac の Apple ではなくビートルズがいたアップル・レコードのアップルですが、なぜかこの日記を書く時にどうしても一緒に聴いていたくなったのです。 鈴木惣一朗さんの素晴らしいプロデュースの下、ビートルズの名曲をララバイ・アレンジで聴かせる3枚のアルバムと、この BOX のみの特典CDの4枚組セット。 特典CDのみ、僕がマスタリングをしています。