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このページでは音楽制作エンジニア、葛巻善郎日々の出来事をつづります。
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Ladies & Pianoman
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「そろそろ自分の自信作というものがあっても良いのでは … 」昨年末くらいから、漠然とそう思っていました。
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何度かこの日記にも書いているように昨年から今年にかけて、転機とも言えるいろいろな出来事がありました。 西新宿のスタジオ・エリアーナのエンジニアを務めることになったり、そこの機材を選ぶ課程で自分の機材をも見直し、Studio CMpunch の機材も入れ替えることになったり。
また、昨年の大震災を経験してからは、生かされていることに感謝し、今まで以上に命を懸けて音楽に取り組もうと日々思っています。
機材を入れ替えている最中でもあるので、実際に使いこなせるまではもう少し時間がかかるのかもしれませんが、そういった出来事もあり、自分の中でのモチベーションは高まっていました。
とはいえ、僕はレコーディング&マスタリング・エンジニアですから、自分の曲や演奏ではなく、アーチストさんの作品を形にするのが仕事、自信作を作るにはアーチストさんやレーベルとの出逢いやタイミングも大事です。
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同じように思ったかどうかはわかりませんが、機が熟した、と言うべきタイミングで声をかけてくれた人がいました。
ランブリング・レコーズの中嶋さん、そしてアーチストはピアニスト 伊藤志宏くんです。
志宏くんとは何度か一緒に仕事をしているのでお互いの個性はよくわかっていますし、中嶋さんは僕と同年代ということで信頼関係を超えた、大切な音楽仲間です (もちろん志宏くんも)。
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そんなわけで、今年の2月に3人で最初のランチ・ミーティングをしました。 曲や編成、そしてスケジュールの確認をし、レコーディングの進め方などを議論していく中で、なぜか「とにかく僕に任せてください、これは自分の最高傑作になるから」と何度も言ったのを覚えています。
どこで録るのかが大事なわけですが、僕が奥沢の Pastoral Sound を推薦し、さらに調律を名取孝浩さんにお願いすることも推薦しました。
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以下、レコーディングに関しては半年ちょっと前の日記に詳しく書いてあります。
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伊藤志宏くんのソロデビュー作「Ladies & Pianoman」が完成しました。
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伊藤 志宏 オフィシャル・サイト
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「Ladies & Pianoman」特設サイト
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このアルバムの面白いところは、伊藤志宏というピアニストのソロ作なのに、全曲ゲスト・ヴォーカリストがいるところ、そして曲ごとに微妙に編成が違う、というところです。
「ホーン・セクションを集めようと思ったら、すごいたいへんじゃないですか。 譜面書いて渡したりしないといけないし、お金と時間がかかるんですよ。」
上の言葉は、たまたまテレビで観てしまった、有名ドキュメンタリー番組で有名音楽プロデューサーが言ったものです。
ミュージシャンを集めることをたいへんと思ったことは僕にはありませんが、このアルバムではもちろん全て人が演奏しています。 きちんと時間をかけ、作品の意義や意味を参加しているミュージシャンやスタッフ全員が理解した、最高のチーム・ワークで作っています。
「Auto-Tune を Auto モードでしか使えないやつはバカだ」
これも有名な音楽プロデューサーが言った言葉です。 僕のクライアントさんはご存じのように僕は修正が嫌いなので、仕事においてピッチ修正はもちろん、縦の線を揃えたり、といったこともほとんどしません。 Auto-Tune は Auto モードでしか使えません (^_^;)
もちろん、それぞれの音楽に適した制作方法があるわけですが、この「Ladies & Pianoman」において、Auto-Tune はほとんど使ってないし、修正どころか編集すら最低限で済ませてます。
下の写真は名嘉真祈子さんをフューチャーした「Fly Me to The Moon」の Pro Tools の編集ウィンドウです (クリックすると拡大します)。
無音を挟むためのカットと、ヴォーカルの歌っていない部分をカットしている他は一切編集していないのがわかると思います。
さらに下の写真はヴォリュームのオートメーションを表示したものですが、まったく使っていません。
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奇跡は僕らエンジニアが起こすのではなく、ミュージシャンがレコーディングの時に起こすのです。
その奇跡を、なるべくそのままの形で作品にするのが僕の仕事です。
「今まで聴いたことのないようなサウンドにしますよ。」
2月のミーティングの時に僕は志宏くんと中嶋さんに言いました。 これがどのようなサウンドを意味するのかは簡単には説明できないのですが、ポイントは配置です。
レコーディングやミックスで常に僕はイメージしているのは、広めのコンサート・ホールのステージ、24bit, 96kHz という枠をステージに置き換えて、その中の前後左右にミュージシャンを配置していきます。 ミックスでは客席の一番良いところで聴いているようなサウンドにしていくのですが、同時に各ミュージシャンにとっても違和感のないような空間を作ります。
音像だけではありません、ダイナミクスに関しても配置という言葉が使えます。 あらゆるジャンルの僕のミックス同様、全てのチャンネルにコンプレッサーを挿み、常に3〜4db のコンプレッションがされています。 つまりコンプをおもいっきりフューチャーし、ダイナミクスを操作しているのですが、実際に聴こえるサウンドはまったくそれを感じさせません。 そういった辺りが「今まで聴いたことのないサウンド」なのです。
志宏くんがある時「ピアノを弾きながら聴いていた音そのままだ」と言ってくれましたし、パーカッションの大儀見元さんが、出来上がった CD の1曲目のピアノの音を聴いて感動した、と言ってくれたそうなので、概ね理想通りに仕上げられたのだと思っています。
決して古くさいやり方だけで進めたわけではなく、むしろ今の機材でしかできない部分もいっぱいあると思いますし、20年ほど仕事を重ねてきた経験で得た全ての技術と情熱が、このアルバムには込められています。
そういう意味では、最高の信頼で繋がっている志宏くんと中嶋さんとのこのチームだけでなく、今まで僕にお仕事を依頼してくれた全ての人たちのおかげでこのサウンドができたのだと思っています。
この作品のこと、そしてこの作品を作っている時に起きたことを、僕は一生忘れないでしょう。
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