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このページでは音楽制作エンジニア、葛巻善郎日々の出来事をつづります。
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ロンドン五輪を観て
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もう8月は終わり9月になろうとしている今頃になっての更新ですが、ロンドン五輪での日本人選手の活躍を観て思ったことを書きます。
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お家芸である柔道が惨敗に終わったこともあり獲得金メダル数は選手団の目標を大きく下回ってしまいましたが、獲得総メダル数では史上最高を記録しました。 考えてみれば体格的に明らかに劣るほか、ハングリー精神を必要としない成熟した社会の中でいる日本人が世界を相手にこれだけの成績を残したことは素晴らしく、讃えて良いことだと思います。
個人的には女子選手の活躍が印象に残りました。 銀メダルとなったなでしこも素晴らしかったですし、28年ぶりのメダル獲得となった女子バレーボールには感動しました。 3位決定戦を前にして家族の看病のため急遽帰国したチームメートのユニフォームを自分のユニフォームの下に着て試合に臨んだ迫田選手、その友情もさることながら、結果的に予選同様救世主となった力強くも美しいバックアタックは最高でした。
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プロの参加を一部で認め、商業主義とも結びついた現代のオリンピックが本来の趣旨と比べるとどうなのかは置いておいて、今回僕が気付いたのは個人競技でも団体競技でも、活躍する選手には優れたコーチやスタッフが付いていて、チームになっていることです。 それぞれが与えられた役割に徹することによって足し算の奇跡を起こす、このことはレコーディングと似ているなぁ、などと思ったものです。
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しかしながら、レコーディングと似ているなぁと思っただけでなく、僕らのいる世界と決定的に違う、あることにも気付きました。
オリンピックだけでなく、ワールド・カップのような世界選手権や世界レベルの試合において、選手同士は超ハイレベルな会話をしている時がある、ということです。 フェンシングの太田選手へのインタビューで読んだのですが、世界レベルの選手になってから、よい高い次元に自分を持って行こうと、同じように世界を相手に戦っている他の競技の選手 (平泳ぎの北嶋さんやなでしこの沢さんなど) と交流を持つようになった、とのことです。
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残念ながら、今の日本の音楽業界には、世界を相手にできるミュージシャンなどほんの一握りしかいませんし、日々の仕事の中で超ハイレベルな会話を楽しむことなどなかなかできません。
日本の現在のヒットチャートを見れば一目瞭然、伝統的男性集団アイドル事務所と地域性超大人数女性アイドル集団がヒットチャートを独占しています。 音楽とは自由な芸術表現ですから、曲の中身についてはあれこれ言いません。 しかし、その売り方はどうなのでしょうか。 CD が売れない中で 100万枚を超すセールスを記録していますが、そこに曲の魅力は伴っているのでしょうか。 彼女たちの努力は認めますが、プロなら努力するのは当たり前だし、それはわざわざ自分たちから言うべきものではないと思います。 総選挙・移籍・組閣・握手会、音楽とはまったく関係ないこれらのやり方・売り方を「あの人は売り方が上手い」と認めてしまう人が僕の周りにも相当数いますが、僕は間違っていると思います。 小太りの豚のようなプロデューサーさんのやることなすこと、僕は絶対に認めることはできません。
音楽業界も、もっと危機感を持たないとダメだと思います。 いや、今はさすがにみなさん持っていますが、遅すぎるしきちんと分析できていません。 今は「CD が売れない」時代なのではなく、「音楽が売れない時代」なのです。 このことにもっと早く気付き、手を打たなければいけないと思うのです。 彼女たちが 100万枚を超すセールスを記録することは業界にとってめでたいことなのかもしれません。 しかしそれは、同時に他のアーチストの CD が 100万枚売れなくなることをも意味するのです。 これは極論だしかなり強引な持論ではありますが、実際ほとんど音楽は売れてないわけです。 彼女たちに関われば、今は潤うかもしれません。 しかし3年後に、それらは大きな拡がりとなって残るでしょうか? 彼女たちを観て、音楽家に憧れる若者が出てくるでしょうか? コンサートは口パク、弾いてもいない楽器を「○○モデル」などと売り出すことが数年後に音楽界の充実として現れるでしょうか? サッカーや卓球などが、協会が大きくバックアップし、次の次のオリンピックを目指した人材育成をしていたりするのに比べ、僕のいる音楽業界はどうなのでしょうか、恥ずかしく、また悲しくなってしまいます。
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オリンピックやスポーツから話は飛びますが、先日シリアで取材中に凶弾に倒れた山本美香さんのニュースも衝撃的でした。 彼女が意図した形とは別の形になってしまいましたが、平和ボケした日本のお茶の間にシリアの惨状が伝えられ、いろいろと考えさせられた人も多いと思います。 普段ニュースなど見ようとしない子どもたちが、テレビ画面から目を離すことができないくらい衝撃を受けた、という話をいくつか聞きました。
そう、僕たちはもっといろいろなことを考えなければいけないのです。
マーヴィン・ゲイが「What's Goin' On?」と歌ったように … 。
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音楽業界はお先真っ暗なのですが、それでも僕の周りには素晴らしい音楽家がいっぱいいます。 お仕事においても、これは本当に恵まれたことだと思いますが、やりがいのあるものばかりです。 「ここの音程直しておいて」「あとはミックスでなんとかなるよね」などと言ってくる人はほとんどいません。 迫田選手や山本さんと同じくらい、自分の大好きなことに使命を感じ、命がけで音楽を続けている素晴らしい音楽家がいっぱいいます。 残念ながら僕も含めて彼らの多くは陽の当たらないところにいますが、その現状に満足せず、一人でも多くの人に彼らの曲を聴いてもらいたい、その一心で僕も命がけで毎日仕事をしています。
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スタジオ・エリアーナがオープンしたのは今年の5月、その準備は岡田くんと一緒に昨年夏からしていましたが、実にいろいろなことがありました。 そして、これは今に始まったことではありませんが、素晴らしい音楽家との出逢いもいっぱいありました。 これから年末にかけて、一緒に作り上げた作品が次々とリリースされます。 アーチストさんと同様、これらは僕にとっても宝ものであり、その年の僕の記録になるのです。
音楽ってもっともっと可能性を秘めたものだと、僕は信じているのです。
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思っていることを次々に書いたら、なんだかとりとめのない文章になってしまいました、すみません。
普段、この日記には僕の活動のみを書くことにしています。 僕がどういうことを考えているのか、文字だけではうまく伝えられないと思うので、あまり書かないようにしています。 しかし、某グループのあまりの茶番劇の連発にはいい加減我慢ができませんし、ロンドン五輪を観てさらに感じた音楽への愛情、それに山本美香さんの事件を見て、この日記は僕の記録なのだから、今いくつか書いておいた方が良いな、と思って書くことにしました。
ついこないだ、ランチを食べていたお店でエリック・クラプトンの「Wonderful Tonight」がかかりました。 イントロが始まった瞬間いろいろなことを思い出し、一瞬で空気が変わったのを感じ鳥肌が立ちました (そう感じたのは僕だけかもしれませんが)。
音楽ってやっぱり素晴らしいな、良い曲ってそういうものですよね。
でも僕はリスナーではないんだ、作り手なんです。 機材が進歩して、今でしかできない表現やサウンドがあるはずなんです。 1曲でも良いから、大きな足跡を残し、何かを伝えることができたら嬉しいな、そう思う毎日なのです。
写真は愛犬 大豆のアーカイブから、子犬の頃のものと小金井公園で満開の桜をバックに撮ったものです (^_^;)
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