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このページでは音楽制作エンジニア、葛巻善郎日々の出来事をつづります。

Aoyama Folk Ways

毎年8月のお盆明けから9月末までは青山学院大学のバンド・サークル Aoyama Folk Ways (A.F.W.) のCD制作をしています。 普段はみなさんコピーをしているわけですが、このCD制作では毎年10バンド前後が集まってそれぞれオリジナル曲を作り、形にしていくのです。 例年始まると共にこの日記に書いていますが、今年はもう終わりました〜、という報告、写真満載でお届けします。

今年でこのCD制作もなんと13枚目(サークルのCDとしては21枚目)、最初の頃は学生達と歳も近く友達のような感覚でしたが、歳を重ねた今もそこは変わりません (^_^;)。 飲み会などのイベント参加率に関しては今の方が多いくらいです。
レコーディングの方法はその時の僕のやり方に合わせてもらっていますが、ここ何年かはレコーディング・スタジオにてドラムのみ全バンド録り、ベース以降各パートの録りとミックスまでを後日僕の本拠地である Stduio CMpunch にて行います。 パート録りは1日1バンド、だいたい夕方過ぎに録りが終わって、21時前後にミックスが仕上がり、その後終電まで一緒に飲み会をします(笑)。
昨年からは先に全バンド分ドラム録りをしてしまおうという流れになり、今年もまずドラム録りを8月20日〜22日に行いました。 スタジオはここ何年か他の仕事でもお世話になっている芦花公園の Studio 882 と下北沢の Studio Nasoundra Palace です。
ドラム録りの様子はこんな感じです。

NHK スペシャル20周年記念盤

10月

フラッシュキューブス

“ビッグ・ピンク”をめざして

THE BEATLES 09.09.09

新しいコンプ2

新しいトイレ

9月

SHOES

SPARTA - Naked

新しいコンプ1

The World of DALALA

8月

中世バロック・サウンドと英国ロックの融合

新しいプラグイン

上の写真3点は Studio Nasoundra Palace のドラム録り風景、以前勤めていたスタジオにもあったので僕が大好きな Pearl の Z シリーズです。 使用マイクはバス・ドラムに Audix D-6 と YAMAHA Subkick、スネアには Audix D-1、タムには Audix D-2、ハイハットには MEARI 391 A-8、トップに RODE のステレオ・マイク NT-4、そしてアンビエンス・マイクは Nasoundra Palace では NEUMANN U-87 Ai、882 では Crowley &Tripp の Recordist Ensemble Stereo Kit を使いました。
3番目の写真に写っているのは近所にいた子供、ではなく、4回生の堀内粒良君、今年でもう3年目なのですっかり仲良し、それにしても粒良(つぶら) という名前はまさにドラマーとして最高の名前ですね。
ドラム録りは1日3〜4バンド分、1バンド90分前後で OK テイクを仕上げていくのですが、これはドラマーにとってはかなりのプレッシャーでしょう。 もちろん普段はレコーディングなどしないだろうし、限られた時間内で悔いのないテイクを残さないといけないわけですから。 他のバンドさんの時でもそうですが、だいたい最初のテイクとその後2テイクくらいは一番良いテイクになるのですが、場合によっては何回も録り直し、複数のテイクから編集したりしてテイクを作っていきます。 残念ながら僕は修正をしないというポリシーがあるので、ちょっとよれたスネアを前に移動、などということは絶対にしません。
それぞれの日の最後に、スタジオにいるみんなで記念撮影、扉写真と下の2枚です。

続いてパート録りです。 他のレコーディング同様、ドラムに続いてはベース、ギター、キーボード、そして最後にヴォーカル、インストの場合はリード楽器、という順番で一人ずつ録っていきます。
写真下は Summit Audio の DI TD100、主にベース用として定評がありますが、昨年冬に購入したので A.F.W. のレコーディングでは初登場です。 この DI の面白いところは Loading ツマミでインピーダンスを調整でき、それを一種のトーン・コントロールとして高音の調整に使えるのです。 それから Output が XLR とフォンの2つあり、どちらもバランス出力出力なのですが、XLR はマイク・レベル、フォンの方はライン・レベルで出力されるのです。 そして僕が愛用しているレクストの電源ケーブルは2種類あるので、電源ケーブル、api 3124+ を通す通さないと、いろいろな組み合わせで試してみました。 結果として一番良かったのは電源ケーブルは Z-PRC01 PLAYER、そして api は通さずフォン・アウトから 192 I/O へ繋ぐパターンでした。 もちろん写真のようにレゾナンス・ピットを両サイドに置いています。
パート録りは Studio CMpunch で下の写真のようにホーム・レコーディングのような感じで録ります。 ギター録りには LINE6 POD X3 を使い、プリアンプには api ではなく TD100 を使いました。
写真左下はベーシストで昨年の音楽委員長前田君、右下は今年の会長山口君です。 前田君は Sans Amp を愛用しています。

ヴォーカル録りはブースに入ってもらって録ります。 写真は今年の音楽委員長でヴォーカルの岩村さん、マイク・セッティングがおかしな感じなのは SE Electronics Reflexion Filter を写真のために取り除いているからです。 Reflexion Filter をマイクのやや後方にセッティングして録ると、後方の反射音を押さえ、結果的に定位が定まり、ピタッと1点で聴こえるので最近は歌録り以外でもリード楽器などで愛用しています。
音楽委員長はCD制作にあたってサークルのみんなをまとめる役職です。 全バンドのレコーディングに立ち会うのでレコーディング漬けになりますが、少しずつ曲が出来上がっていく様子をずっと見ることができるのは普段なかなか経験できないことなので、面白いんじゃないかなぁ、と思います。

全てのレコーディングが終わるとそのままミックスダウンへと進みます。 通常僕の場合はミックスは後日、というか仕切り直して行いますが、A.F.W. の時だけはその日のうちに仕上げます。
ミックスにかける時間はだいたい2時間くらい、なるべく毎回違うプラグインを使うように心がけています。 エフェクトに関してはバンド編成なので凝ったことはせず、しかし1曲に1ヶ所くらいは仕掛けエフェクトを使い、1枚のCDとして聴いた時にそれぞれのバンドにそれぞれの良さが出るように仕上げていきます。
ミックスを確認してもらった後はそのままスタジオ内で軽く飲み会、たとえレコーディングが早く終わっても、飲み会が終わる時間は変わりません(笑)。
そして最後に記念撮影、写真左下は水島インスト、右下は葡萄酒家のみなさんです。

全バンドのレコーディング終了後に、僕一人でちょっとしたミックスの直しをして、それからマスタリングをして A.F.W.のレコーディングは終了です。 今年も素敵なCDになりました。


この仕事で僕が心がけていることは、前にも書きましたが絶対に修正をしない、ということです。 他のお仕事の場合でも同じなのですが、とはいえ多少の修正はどうしても頼まれてしまいます。 このCDは営利目的で作るわけではない、サークルのみんなのその年の夏の思い出になるわけだから、なるべく修正はせずにみんなの演奏をそのまま重ねていきたいのです。 そのために普段のレコーディングよりも時間がかかったり、その時はやっぱり修正しようかな、などとも思いますが、こうやってみんなで1つの作品を目指していく課程、そして出来上がった作品を聴く喜びが好きなのです。


どんなCDになるのかは今のところ音楽委員長と僕しかしらないわけですが、10月にはCDの全体打ち上げがあり、そこでみなさんは初めて曲順やアルバム・タイトルを知るのです。


今年の夏も楽しかったなぁ、おつかれさまでした!